2011
12/19

G杯争奪グレ決勝大会 ~終わらない挑戦~

釣行記 / comment : 6 / trackback : 0

船へ乗り込み、急いで次の2試合分の撒きエサを作る。
慌てふためいた昨年とは違い、今年は少々時間的にも余裕がある気がした。
風裏の磯に来たのか定かではないが、あれだけ吹いた風も収まっている。

「次!14番と15番の選手・・・前へ!」

伊豆の杉山選手と、比較的大きい島へ渡礁。
今度はジャンケンで勝ち、潮通しの良さそうな沖向き先端からのスタート。
雰囲気的に言うと、男鹿戸賀磯の「なべ岩」のような感じ。

立ち位置の右斜め後ろから左斜め前に向かって、トロトロと潮が流れている・・・見た目では1試合目、2試合目より釣れそうな感じ。
エサトリは今のところ皆無。

直接流れに入れると早々にセンターラインを越えてしまうため、潮が緩い少々手前に仕掛けを振り込み、馴染む頃に引かれ潮で速い流れへ入れる・・・そんな感じで手返しを続けた。

船着きで竿が曲がるのが見える・・・また先制されたか。

こちらは延々と餌が残るが、まだまだ、焦るな。これは釣れるはず。

そして・・・その衝撃はいきなりやって来た。

ウキが今までにない速さで「シュン!」と視界から消え、合わせる間もなく「ガツン!!!!」と猛烈にひったくられる!

「うぉっ!・・・とっとっと・・・なんじゃこりゃ!」

何とかラインを出さずに耐えるも、先調子のセンティォ1.25号がバットからひん曲がる。

「やっ、やば、折れる・・・」

と思った瞬間「パーーン!」と高切れ。思わず後方へ吹っ飛びそうになり、左手を岩に付く。

ウキが虚しく・・・プカプカと沖を漂っている。

まさか大会中にウキパラでもないので、急いで仕掛けを作りなおそうとするも、今まで経験した事がない引きに、指先が震えている。

なんだったのだろう・・・くそぉ。

再度気を引き締め、同じ様に竿2本先へ振り込みむと、今度はかなり浅い棚だったと思う・・・。

「シュン!」とウキが視界から消え、そして再び猛烈な引き込み!

反射的に体が動き、ありったけの力で耐える・・・左手も竿尻に・・・
すると左へ方向を変えたかと思うと、今度は猛烈なスピードで右手前へ突っ込む。

全く持って追い付いていない。

・・・そしてまたもや高切れ。虚しさを象徴するかのように、しばらくしてからまたもやウキがプカプカと漂う。

凄い・・・これがもしかして・・・ビック尾長?

試合中だしワクワクしている場合では無いのだが、今思えばワクワクしていたかも。

痛んだラインを巻き取ろうとしたが、10m・・・15m、だめだこりゃ。
こんなんで止めれるとは思わないが、1.75号を巻いたスプールに交換し、ハリスも2号を結ぶ。
普段の釣りでは太くした後は「時すでに遅し」で釣れないものだが、こんな時に限って、それは3度もやってきた。

「スゥ・・・ッ」

「こんどこそ・・・おりゃ!!!」

「・・・ブチッ!」

「あれ?」

今度はハリスのチモトから、やり取りする間もなく切られる。

そんなこんなで気が付くと後10分しかないではないか。
駄目だ、冷静にならなきゃ。

そのポイントを諦め、際へ入れると・・・サンノジ連発。

正体不明の魚に翻弄された前半戦が終了した。

杉山さんは2尾以上釣ったはず。これ以上離されると厳しい。
切れかける集中力を何とか維持し、後半戦の釣り座へ。

前半戦と違い、陸向きのポイントはエサトリも多く潮もゆったり。
足下へエサトリを集め、少々遠投して釣りを続ける。

15分も経ったろうか。
ようやく口太らしき魚を掛ける。30cm以上は間違いなくあると思うが、何だか凄い余裕のやり取り。

「はぁ・・・やっぱさっきの奴は凄かったよな」

と余裕で浮かせた口太へタモを伸ばすと・・・あれれれれ?

ここで信じられないような出来事が起こる。一瞬、自分の眼を疑った。

何と、タモ枠が柄から外れ、ゆらゆらと沈んで行くではないか。
背筋が凍りつくほど慌てふためく。
沈めてしまったら当然替え枠はなく、4試合目は放棄したも同然。

掛かった魚なんぞに構っている訳に行かず、センティオを股へ挟んだまま柄をズイズイと伸ばし、沈みゆく枠(網)へ向かって必死に伸ばす。

2ヒロ半は逝ってしまったろうか・・・ヤバい。

「もう少し・・・もう少し」

掛かった魚が暴れ、竿が上下し、股間というかホール付近がガンガン叩かれる・・・アッ、アウッ♪

くそぉ、こんな時に笑いを取ってどうすんだ!俺。

それでも何とか網へ柄が刺さり・・・垂直に伸ばし・・・救出成功。ホッ。

掛かっていた魚は散々と自分の股間を叩いた末に逃亡。

何とも自分が情けなくなる。この25年間、こんな事は一度もなかったのだが、よりによって・・・。

怪物と対峙したワクワク感もどこかへ吹き飛び、集中も途切れがちになる。
明らかに検量外の25cmと、尺に届くか微妙な1尾を釣り上げて終了した。

・・・結果、29cmで検量なし。

3回戦も敗退。これで1勝2敗となり、今年も予選敗退が決定した。

悔しい事は凄く悔しいのだが、落ち込む事もなく気持も含めて次の試合に備える。
何せ、まだ最後にワクワクする試合が残っているからである。

「次!15番と18番の選手・・・前へ!」
「おし!最後だ。悔いのない試合を・・・」

ワクワクとは、今大会のポスターを飾る「松田鐘樹」さんとの対戦である。

自宅の寝室に何ヶ月も前から貼ってあった松田さんとの試合・・・何か妙な気分というか、脳だけ別世界へとでも言うのか、とても不思議な気分に陥る。
開始まで5分以上余裕があったため、挨拶がてら今日の状況などを会話させてもらい、再びリラックスした戦闘態勢に戻る事ができた。
彼も何とも優しくて人当たりが良く、笑顔がとても印象的な好青年だった。

「よろしくお願いします!」

ジャンケンで負けた僕が左へ入り、松田さんは船着きへ。

「よし、これで最後、最後の・・・」

しかし・・・ここまで我慢していたのだが、急に様々な想いが一気に噴き出るかのように頭中を駆け巡る。

それは、人であり震災の映像でもあり家族でもあり・・・

あの大震災から始まった2011年。
全ての大会、イベントの中止、無期限の延期、自粛・・・「こんな時に釣りなんかしてもいいのか?」という心の葛藤。
この先、東北の磯釣りはどうなってしまうのか・・・と悩み続けた数ヶ月。

多くの仲間に支えられ、どうにかここまで来れた、一生涯忘れる事の出来ない2011年。
何度も夢にまで見た大切な試合前だというのに、1投目の仕掛けをなかなか振り込めず・・・。

「ふぅ・・・何やってんだ、俺」

偏光を外し、ある流れるものをコマセで汚れた磯タオルで拭きなおし・・・よし!!

最後の磯は潮行かず、エサ取りも最も激しかった。
際には70cmはあろうカンダイが常に3尾以上ウロウロ。
その先にも同じく70cmはあろうウスバハギが数尾。
何処まで投げてもキタマクラや正体不明のエサトリが水面へ波紋を作る。

まぁ、考えようによっては男鹿の磯に似た状況か。

松田さんの釣りをチラ見するも、船着きも同じような状況だろう・・・掛け合いにはならない。3尾までの勝負か。

コマセを何点かに打ち分け、ローテしながら反応を探る。
一度でも餌が通ったエリアには、コマセを入れないでもう1投。
それを繰り返し続けるも、グレからの反応は得られず、エサトリが更に増え始める。

何とか通っても、掛けると同時に竿がガンガンと叩かれ・・・アイゴ。
松田さんは何度か竿を曲げていたが、取り込みまでは見ていなかった。

気温がグングンと上がり、額からは汗が滴り落ちる。
痛めた肩もそろそろ我を思い出したかのように痺れ始める。薬も切れたかな・・・。

ノーフィッシュで前半戦を終える。
あと50分、頑張れ。

船着きへ移る。
徐々に日が傾きかけ、海が逆光で見え辛くなる。
落ち着いてウキを交換する。
釣れても恐らく渋いだろう。ハリス1.2号4ヒロ、ウキもハリスへ入れ込み、針は4番を結ぶ。
ウキ止めは無し。

こちらはカンダイの姿は見えず、潮加減?なのかエサトリがあまり沖へ出ていかない。それでも殆ど残らないが・・・。

投点をあちこち変え、少しでも潮が動く場所を探る。我慢の釣り・・・。

残り15分。
ウキが見え辛かったが「パラ・・・パラッ」とラインが動く・・・アワセ!
「グゥゥーーーン」と気持ち良く竿に乗る。
前試合でタモの柄のゴムを紛失していたため枠が回ってやり辛かったが、何とか取り込みに成功。

残り10分・・・9分・・・。
「ジワッ」に合わせても乗らず。でもグレ臭い。

残り7分。
今度は「ジワッ」に少しテンションを掛けてやり、ゆっくり・・・聞き合わせると「グン!!」と竿が絞られる。
「よし!」
最後の最後でリズムらしきものが生まれつつあったのだが、時間がない。

残り2分・・・あれ?
松田さんが竿をたたまれた。
見ていた僕に気が付き「あぁ、まだ時間ありますから気にしないで下さい。僕はギブアップです(笑)」

「え??えっ、ええ・・」

と歯切れの悪い返事をし、最後まで竿を振るが・・・タイムアップ!

終わった・・・

ドッと疲労感と充実感?がワラワラと肩に押し寄せた。
竿を仕舞いながら

「松田さん結構釣ってましたよね??」
後半戦も何度も竿を曲げてのやり取りが見えていたので、そう質問する。

「あぁ、あれは全部バリですよ(苦笑)2尾ですよね?きしさんの勝ちですよ」

「うへっ!本当ですか?」

でも、検量が終わるまでは信じられず・・・。

池永さんの最後の検量が終わる・・・本当だ。勝てた・・・最後に勝てた。

船へ乗り込む。
2勝2敗。
僕の長かった、本当に長かった2011年G杯グレもここで終った。


PC050705.JPG

悔しさはそのうちジワジワと湧いてくるだろう。

ただ、今の頭の中は充実感と、何かに対しての感謝しか残らず。

結果は・・・また来年挑戦すればいい。

PC060722.JPG

まだまだ終わらない挑戦。

終わってたまるか。

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コメント

投稿 : some|2011-12-20

いやあ、笑った。でもね、そのあとじーんときたよ。

言葉がでてこないよ。

良かった、ほんとうによかった。

投稿 : きし|2011-12-21

>someさん

ほんとね、僕も笑ったもん(笑)

しかし全国では考えられないようなミスが起こるって本当ですね。


もう少し話は続きますが・・・

昨年と違い、いや、昨年は昨年で素晴らしかったですが
今回はそれ以上に、釣り以外で得るものも多く、充実した大会でした。

しかし相変わらず涙腺が弱いなぁ・・・(笑)

ありがとうございました。

投稿 : some|2011-12-21

なんかね、魂で釣りしているって感じたよ。

いや、玉にかけてんじゃないよ。(笑)

ぐぐぅ~っと前に出てゆくような釣りだと思う。強い釣り師だな。

涙の数だけ強くなれるって詩があったなあ~、たしか。

あれだね。

投稿 : きし|2011-12-22

>someさん
玉も使ってって事?(笑)

魂というか「心」で勝ちたいですね。

心技体の「心」で勝ちたい。

目指す所ですね。

また美味しいお酒飲みながら語らいたいです。

話したいことが山盛り(笑)

投稿 : さあや|2011-12-23

笑っちゃだめだけど、大変だったですね。

松田鐘樹さんは、さあやんが釣りに行くときの渡船が一緒で、よくうちの父親も一緒に釣りをする友達です。
すごく優しくてあのままの人です。

確かに東北は震災があって、さあやんも経験したことがない驚きと悲しみでいっぱいでした。
予選もたしか中止になってたように記憶してます・・。
そんな東北からや、今年初めて予選が開催された沖縄の選手がいろんな思いで参加された、G杯だったように思います。

投稿 : きし|2011-12-24

>さあやん

うん、大変だったし笑い所です。
G杯始まって以来の、正にチン事でしょう(笑)

松田さんは素晴らしか人柄でしたね。
そして沖縄の方々の印象も忘れません。

やっぱいいですよね、全国大会は。

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海日記

プロフィール

きし

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幼き頃の投げ釣りに始まり、途中空白期間を経て20代後半から本格的に海釣りを再開する。
黒鯛、メジナ、真鯛を求めて通年海へ通う。年間釣行日数60日

ホームグラウンド
男鹿半島加茂沖磯(フカセ)
船川港(紀州釣り)

・紀州釣りクラブFreedom East所属
・マルキューフィールドテスター
・東レフィールドスタッフ

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