2009
12/15

Mな漁師

釣行記 / comment : 13 / trackback : 0

人生も40年を過ぎた。
同じ仕事を20年もやっていれば、誰でもある程度のノウハウは身に付くし、ある程度出世するし、ある程度の給料ももらえる。ま、今の時代だと貰えるだけ恵まれてはいるのだが・・・。
僕もそうであるが、多くの人は偶然的に今の仕事に付いているだろう。

「もうそろそろいいかな」

こう言って今まで培った全てを投げ出し、イチから再スタートを切った、何とも羨ましく男らしい仲間もいる。
ただ、それは「家族」というものを抱えていれば、なかなか出来る事ではない。
“たられば”の話であるが「もっと選択肢はあったはず」「このままでいいのかな」なんて、妙な事が最近頭に浮かぶようになった。

選択肢が与えられないというか、家業を継ぐ宿命にあった方々からは「なにくだらねぇごど考えでんなや!甘い!」って怒られるな。
例えば、大竹丸のヒロ兄や金竜丸のマコ船長、戸賀の江畑船長など。
機会があれば聞いてみることにしよう。
「ん?!漁師に決まってるべ」と男らしい答えが帰って来るか、はたまた「芸能界だ」「バーテンだ!」だったりして。

店へ入ると・・・
「おぅ、久しぶりだごど。昨日・・・○○さん、サイドカー3杯、ソルティードック5杯・・・さぁ、何とす!」
「のめぇ!!!」

江畑さんのカクテルバーも面白いかもしれない。

この人はどうだったのかな・・・。

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それこそ僕なんかが「海で仕事したい」なんて言ったら「やめとけ。大甘だ!」
って言われるだろうけど、少しだけその“入口”を経験してみる事なった。

当日は、南東の強風。船川港ではシケの風である。
朝から兄や友和君とノンビリ過ごし、徐々に風が南へ変わり始めた頃に・・・
「よ〜し!きしさん、いぐが!!」

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僕の他に、ベテラン二名、海風父、兄の4人で出港。

まだウネリが多少残る中、漁場へ到着。

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まずは、兄が網を手繰り寄せ、皆で船へある程度引き上げる。

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名前は忘れたけど、ここからハタハタをタモですくう。

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とにかく重い。
上げ波に併せて「そりゃぁぁぁ!!」と4人で網を起こすのだが、びくともしない。
おそらく、数千匹?重量にしたら何百キロ?
足を船に突っ張り、半分寝た状態で、渾身の力で網を引き・・・ようやく上がってきた。

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もう体中、ブリコや魚のヌメリやモクやクラゲの破片でグチャグチャ。
普段使わない筋肉を使うもんだから、手足もプルプル震えだした。
おそらく、相当に情けない姿だったに違いない。

そんな中でも、兄は力いっぱいタモでハタハタをどんどんすくっていく。

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どんなに船が揺れようとも、絶妙のバランス感覚で、よろける事すら無い。

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これが海の男である。

あっという間に、歩く事すら出来ないほど、船は魚で一杯に。

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「おぉ〜し!戻るが!!」

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その後も手際よく網を戻し・・・僕は何をやってるのか良く分からないまま、一回目の漁が終了した。

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帰りは魚の重みで船が海面スレスレを走る。

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ガバガバと音を立てて、船に海水が入り込む。
「ちょ、ちょっと・・・しっ、沈む。父さん。これ大丈夫?」
「なんてもねぇ(笑)沈んだら泳げばいいべ、病院も近けぇし(笑)」
まぁ、そりゃそうなんだけど・・・

港へ戻ると、友和君が軽トラで待機。
トラックへの積み込み作業が始まる。

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「おかえり、きしさん。何とだった?大丈夫?(笑)」
「はぁ、はぁ・・・こぇっす・・・はぁ、はぁ」
何とも情けない話である。

軽トラで店の前へ魚を運び、今度は仕分け作業。

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これもこれで大変。なんたって、何千匹だ。

その間も、兄は休む事無く注文や箱詰め、店の対応などをこなしていく。
そうして、あっという間に辺りが薄暗くなってきた。
初冬の1日は早い。

「お〜し、明日もいっぺ魚入るべがら、今日もう1回網起ごしに行ぐが!」

少し離れた場所で、海風父が叫ぶように話しているのが聞こえた。

「げ?もう一回行くの?まさか俺行かないよな?まぁ、いいか。黙っていよう」

と、人影に混じって仕分けをしていたら

「あれ?きしさん、どさいだ?」

・・・あ、やべ。探してら。

「おぉぉ、きしさん、こごさいだが(笑)さ、海さもう一回いぐど、あんべ!(笑)」

・・・うわっ、見つかったが(笑)

再び、薄暗くなった漁港を出発し・・・

「おっしゃ!力へれよ!せ〜の!!」

ハァハァ言いながら、渾身の力で網を起こす。
あんな小さな魚になんか負けてたまるか!
無我夢中で網を引っ張る。

「よ〜し、今日はいいな。戻るが」

漁港へ戻って、再び友和君とトラックへ積み込み・・・そして仕分け。

気が付いたら6時を過ぎていた。

「きしさん、ありがど。ハタハタ好ぎんなだげ持って帰ってけれ(笑)」
「いや・・・あどいいっす。しばらぐこの魚見でぐね(笑)」

多い日は、1日に3回も網を起こすそうである。
しかも今日の天気はまだまだ良い方。相当に荒れても、次の日の網起こしを考えれば無理してでも行かねばならぬ時も多々あるとか。
それを吹雪の中で、三週間も毎日続けるのだ。
そうやって身を削る想いで生計を立て、家族を守っていくのが海の男、漁師なのである。

まぁ、海が好きとはいえ、自分には無理な仕事なんだろう・・・。

それにしても、なんだか体中のモヤモヤが吹き飛んでとても気持ちが良い。
もう少し色んな漁に連れて行ってもらおうかな、邪魔にならない程度に。

あ、そうだそうだ。釣りにも行ってきたのだ。

水温も大分下がり、ぼちぼち寒クロの話題も聞かれるようになったね。
まぁ、寒クロは寒クロで楽しいのだが、今年はやはりメジナで色んな思い出があった1年だった。
そんな想いもあり、今日もグレ配合のコマセを詰め込み海へ向かう。

しかし、そんな想いを吹き飛ばすような強風。
しかも風による表層流が異常に早いだけで、底潮はさっぱり。

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水深12m前後の釣り場。1本半の棚で探っていたけど、反応は皆無。
際にはウマズラ、タナゴ、アジが無数に群れてるけどね。何故か沖には全く出ない。

さて、ここからがメジナ釣りの奥深さというか、面白さとでもいうのか・・・。

定説では「落ちの時期は魚が浮きにくい」とされており、以前の僕も含めて、これによって混乱してしまうのだ。
初冬の水深12mの釣り座で、7mで反応無かったら?普通は更に下げてしまうよね。

底でまで探って、反応が薄いと判断したら、逆に思い切って上げてみる。
4ヒロ半・・・4ヒロ・・・3ヒロ半・・・ん?
ここで、怪しいエサの取られ方。沖にアジは居ない事から・・・これは?

しかし、重い仕掛けではいつまで経っても“そいつ”が乗らない事から、5B、3Bと試してみる。
でも、やはり風が猛烈に邪魔をする。もう少しだけでも落ちればいいのだが・・・。
単純に軽くしても、ラインが引っ張られ仕掛けが浮き上がり、どうにも上手く行かない。

普段は滅多に使わないのだが、たまたまベストに入っていた3Bの水中ウキを使ってみる。

うん、何かいい感じだ。

すると・・・

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おぉぉ、やったぞ。

んでも、もう少しアタリが・・・という事で、あれこれやって
ようやく連発!

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1番しっくりアタリが出たのは、3B+3B水中ウキ(ビッグ)+G3+G4でゆっくり沈める。
ちなみに、ハリスは1ヒロ。
2ヒロだとエサが取られるだけで、なかなかアタリ出ず。
真相は分からないけど、1ヒロである程度立たせた方が、角度的に今日のメジナには良かったみたい。

メジナの反応が落ち着くと、今度は同じ棚(3ヒロ半)でチャリコ(25cm)がバタバタ。
試しに棚を下げると、やはり反応は悪かった。

無論、逆のパターンもあるのだろうけれども、やはり人が決めたセオリーってのは、常に当てはまる訳ではない。逆に、厳しい季節には当てはまらない事のほうが多いと思う。
「落ち」だろうが「乗っ込み」だろうが、魚にとってその層が丁度良いだけという、ごくシンプルな事なんだろうね。
何事もそうだが、人間が介入する事によって物事が複雑になる。

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あぁ、何だかまだ体が痛い。
相当に変な場所の筋肉使ったんだろうね。
普段は腕と腿しか使わんし。あ、あとたまに腰を・・・いやなんでもない。運動不足だ。

でも、気持ちいいというか、もう一度あの清々しい苦痛を味わいたい・・・やっぱMだ。
まてよ?という事は、兄もMなんだべな、たぶん。おもいっくそ。
だって、すごく気持ち良さそうに漁してたもんなぁ・・・(笑)

▲

コメント

投稿 : 魚心|2009-12-15

お疲れ様です(o・ω・o)ゝ

きしさんの・・・海の男修行に感動っす☆
一緒に建設業界から鞍替えしましょう(´ω`)/
・・・甘いっすねヾ(;´ω`A

寒クロ・・・反応してます@@@
近々、登場しますψψ(*`▽´)Vヨロシクっす☆

投稿 : きし|2009-12-16

お疲れ様っす!

2人で会社やりますか。
設計から施工までの。営業はヘイちゃんで(笑)
いやぁ・・・しかし厳しいですね、建設業界は(^_^;
ま、考えるより行動。
お互い、年度末までぶっ飛ばして頑張って行きましょう。

んで、ひょっとして○研の大会ですよね。
う〜ん・・・北勢強風、波3〜4mってとこでしょうか(^_^;
仕方がないことですが、本当に毎回荒れますね〜。

一緒に地磯走りましょう。背負子忘れずに(笑)

お待ちしておりますm(_ _)m

投稿 : なか|2009-12-16

ひさしぶりっす。

いい仕事してますね〜(^_^)v。今、コルセットしてまして全然動けません。(+_+)

今年は、もう出撃できそうにありません。磯を駆けるなんて夢のまた夢。
でも、今度教えてください。チヨっとだけ行きたい、行けるときに頑張ってみますから。

去年、今年と良い釣りできなかったから来年こそは、意気込みだけはあります。

ハタハタ手伝いに行きたかったな〜。イワシ釣りが今年の釣り納とはなんだか
かわいそうな自分です。

投稿 : tomi|2009-12-17

ん・・、  

兄よりハタハタ網が似合いそうな気がするのは俺だけ?
しっかし、ハタハタ満載でくると船上はあんな修羅場になるのね。
すんごいすな。

最近はセオリーに翻弄されてる僕です(爆)

投稿 : 若旦那|2009-12-18

リアルなハタハタ漁の実況に感謝!
おいらが想像していたよりも凄いことになっているんですねぇ。

それにしても、きしさんの網を上げている姿・・・・・見てみたいっすなぁ(笑)

投稿 : きし|2009-12-18

>なかさん

ごぶさたっす!

あらら、コルセットですか(^^;
そりゃお大事にしてください。
寒いとなおさら辛いですよねぇ・・・。

ま、この寒気も直ぐに落ち着くでしょうから
ゆっくり養生してくださいませ。

と、言いながら自分もあれから腰が痛くて(^^;

やっぱ兄は偉大だ(笑)

投稿 : きし|2009-12-18

>友ちゃん

三週間、お疲れ様でしたm(_ _)m

明日から、思い切り羽根を伸ばして遊びにいって下さい。
川反でも大町でも山王でも(笑)

しかし、男鹿の漁師の方々からすれば、毎年この時期は特別な想いがあるのでしょうね。
少しでも味わえてよかったです(^^)

さ、来週辺りに竿納めにも行きますか!
都合が合えばご一緒お願いします。

あ、自分の竿納めは1人で済ませてね。
僕は純ちゃんと行こうかなぁ(笑)

投稿 : きし|2009-12-18

>tomiさん

まいど様です!

ハタハタ網似あう?

ブリコと網ににまみれて「ハァハァ」言ってただけだけど(笑)

しかし厳しい世界ですよねぇ。
だからこそ、憧れも強いのですが。

セオリー。
江畑のトウに言わせれば「俺がルールでありセオリーだ!」

だそうです(笑)

シンプルに行きましょ(^^)

投稿 : きし|2009-12-18

>若

見たい?来年は一緒に行こうよ(^^)

兄とも話してたけど、釣り仲間みんなで網起こしもしてみたいですよね。

D&Aなんかと行けば面白いだろうなぁ。
「なにやってんなや!」
「おめ、ちからへれって!」
想像しただけで笑える(笑)

年末、忙しいでしょうが、頑張って下さいませ。
正月は楽しみにしています。

投稿 : 海風・兄|2009-12-19

どうも?ド?Mです(笑)
なんかヤリ足りないけどとうとう昨日で終了してしまいました^^;
コキ使われるのがそんなにおもへがったすか?
来年はもっとイジメてあげますんで(爆)
あんな小さな魚なのにもの凄い力だったでしょ!?
ちなみにあの時の網の中にいた魚はおよそ3トン以上。
ウチは船が小さく一回で詰める量が頑張ってもせいぜい2トン弱程度。
だから毎回かなりの魚を逃がしてやってる事になります。
手が回らないのに獲りすぎる必要はないですもんね(^^)
でもあの通りキツイ仕事ですがみんなでやると楽しいっスよね〜♪
今年も新メンバー?が多数入門しましたし(笑)
だんだん自分の?夢スタイル?に近づきつつあります。
俺も甘チャンだけどやっぱ海の仕事が好きだなぁ・・・。
てか海しかねぇ〜し(^^ゞ
また集合かけますんでその際はよろしくです!

投稿 : きし|2009-12-19

>兄
今日もありがとさんでした(^^)

んで、やはりあれはtだったのか。
どうりで最初は全く動かなかった訳だ(笑)

しかし凄いですね。ほんと小さな魚なのに。
なんか、今更ですが自然の凄さというか、生命の凄さを感じました。
ますます今の自分を見つめなおしちゃいますよね。
こんなとこで、こんな事ダラダラやってていいのかなぁ・・・って。
ま、会社を辞めて漁師!って事は無いですけどねぇ(^^;
でも、凄く勉強になったし、いい機会に巡り合えました。

ナマコにも連れて行ってください(笑)

なんだかんだ、色々とあった2009年も残り僅か。
あっというまで、ものすごいスピードで過ぎ去ったけど・・・
今年もおもしぇがったすな(^^)

〆もよろしくお願いします。
たぶん、大シケだべども(笑)

投稿 : センド|2009-12-20

今回はハタハタに「ヤラレタ!」っスカ?^^

芸能界? いいかも♪
○○業界なら、もっといいかも♪♪

しかし、兄はカッコイイね。

投稿 : きし|2009-12-22

>センドさま

んだんだ、先日もハタハタの祟り?(^^;

んで、○○業界ですか?
・・・う〜ん、何だすべ。
A○業界?(笑)

兄はかっこいいすなぁ。何やっても。

兄とか加茂の船頭さんたち、江畑のトウさん。
これでドキュメント映画でも作れば面白いのになぁ。
それみて、今の子供達が少しでも「将来は漁師!」なんて出てきそうな気もしますよね。

しかし毎日シケますねぇ〜。

今のうちにゆっくり休んで、体調万全で年末年始を迎えてくださいませ(^^)

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きし

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幼き頃の投げ釣りに始まり、途中空白期間を経て20代後半から本格的に海釣りを再開する。
黒鯛、メジナ、真鯛を求めて通年海へ通う。年間釣行日数60日

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男鹿半島加茂沖磯(フカセ)
船川港(紀州釣り)

・紀州釣りクラブFreedom East所属
・マルキューフィールドテスター
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