2008
11/18

自然体の男

釣行記 / comment : 6 / trackback : 0

2008年もあと1ヶ月とちょっと。
正月の海風大会に始まり、春夏秋冬と海へ通った。きっと、来年も再来年もずっとこうやって年を重ねていくのだろう。
人それぞれ価値観は違うと思うが、魚だけを追いかけていたら、こんなに続いたか?と考える事がある。
もちろん大きいのが釣れれば嬉しいし、何も釣れなければ悔しくも思う。
それは人としてあたりまえの事。
でも「今日は釣ってやるぞ!!」ではなくて、こうして毎回新鮮な優しい気持ちで海へ向かえるのは、この人との出会いが逢ったからである。
飽きるどころか、海に対する想いは深まるばかり。
「何を伝えたい?」という明確なビジョンはまだ見えていないが、ブログを書き始めたのもこの人との出会いが始まりである。

広島の友人、田中優海さんが2年振りに秋田へやって来た。

・・・・・・・・・

秋田空港へ彼を迎えに行き、サファリに乗り込んで我が家へ向かう。
のんびりと積もる話をしながら再会をじんわりと味わう。
お互いも車も、初めて会った時と何ら変わっていない。

我が家へ着くと長男&次男がお出迎え。彼らも優さんのファンなのである。
そして、去年生まれた三男君とのご対面。
彼に抱きかかえられると、笑顔と全身を使って嬉しさを表現する。
「おっとっと。新鮮なハマチを抱えた時みたいだ(笑)」
表現がなんとも(笑)

うちの家族とは、十年も前からの知り合いみたいにリラックスして会話が行き交う。
同じ趣味を持ったという事だけの繋がりが、家族の付き合いになっている。
1000キロ以上も離れているのに・・・不思議なもんだ。

長男が「優さん何しに来たの?」「仕事に決まってるやろが(笑)」
そんな感じの会話が続く。

「ほんじゃ、行ってきまーす」
男鹿へ向かった。
週間予報では雨だったのだが、当日は稀に見る秋空・・・さすが晴れ男。
ちなみに、彼は遠征時に雨に当たった事は皆無に等しいらしい。
明日も雨の確立90%だけど、こりゃひよっとして?

今までは僕のホームである加茂沖磯にしか案内した事が無かったので、戸賀へ行ってみることにした。
船頭さんも見せたかったしね。
昼前に戸賀漁港へ着いた。車は30台ほど。
渡船場では船頭さんがのんびりと網の手入れをしていた。

「こんちわっす。へんな時間にすみません」
ニヤッと笑いながら「なんもだ。どさいぐ?帰り何時だ?今日はlukeさん来てるど」
「おぉ、んだすか。北のほうへ行きたいんですけど、どっか空いてます?」
「・・・昨日、夷で真鯛上がった。今、潮上ってるがらlukeさん居だどごもいいべ」
「lukeさん夷?う〜ん、そうですか。んで、北は?」
「夷のハナレあいでらども、あそこはこんた日でねば上がれのだ」
「あぁ、そうですよね。北は向けませんもんねぇ。んで、どっけ周辺あいでねすか?」
「・・・夷さいま4人いだ。だめだば夷って手もある、うん。さぁ、なんとす!!」
「・・・はい、夷のハナレに行きます」
「よし!準備せ!!」

隣で優さんが笑っている。ま、もっとも会話の半分しか理解できないと思うけど。

船が南へ向かった。宮島・・・水族館沖と船が進む。
「加茂とは違いますが・・・こちらも雰囲気いいですね」
もう既に満足感一杯の笑顔で彼がそう話した。

島へ上がる。隣磯にはlukeさんが居た。
「おぉぉっ!久しぶり!!」
「どうもっす!なんとだすか?」
「手の平だげだぁ〜(笑)」

どうにも状況はあまり良くないらしく、見ていると付け餌も延々と残って帰ってくるようだ。
まぁ仕方が無い。さて、準備するか・・・あれ?
彼はといえば、ゆ〜っくりと海を眺め、あまり釣りするって雰囲気じゃない。
海に浸ってる・・・とでも言うのか。
「優さん?潮がこういっているみたいだから、沖向きでやってみて」
「え?あ、あぁぁ、分かりました」
ゆっくりと準備を始めた・・・時には海へ再び目をやり・・・本当にゆっくりと。
先に準備を終えた僕が釣りを始める。
彼は以前からゆったりと構えるタイプだったけど・・・さらにゆったりしてるな?
「よし、やるか。きしさん、この辺って水深どんくらい?」
ようやく二人並んで釣り開始。12時半を過ぎていた。

広島といえば、お好み焼き・・・じゃなくて“遠投”をイメージされる方が多いと思うが、もちろん彼も良く遠くへ投げる。
ただ、何ていうのか・・・動作が速い訳ではなくて・・・う〜ん、上手い表現が思いつかないが・・・。
力強い訳でもなく良く動く訳でもなく、自然な・・・あ、そうそう、自然体って言葉が最も近い。

・・・う〜む。
しかし、前からこんな感じだったかな?少し変わったが?

しばらくして海から反応が現れる。
潮が見た目は上っているのだが、動いているのはハナレの水道から来る表層だけ。
底はむしろ当たってきている・・・根の際でベラが連発する。
しかも僕がベラ5連荘しているのに、彼には全く釣れない。
「きしさん、よう魚釣るね。さすが地元」
・・・あまり嬉しくない(笑)

程なくして、グ〜ンと彼のロッドが絞り込まれた。

PB150703.JPG

30弱のグレ。やり取りも何もかもが、僕の目には“自然体”に映った。

PB150704.JPG

そして連発。

PB150705.JPG

でも、だからといって次の動作が早くなる訳でもなく、何かのんびりというのか・・・

「きしさん、グレの色悪いですね。活性低いのかなぁ?」
「うん、ベラの活性は高いんだけどもね〜」
「あ、きしさんの方だけね(笑)」
「そうそう(笑)あ、入った!」

ようやくちょっと大き目の魚が掛かったのだが・・・ぬぅっ?

PB150702.JPG


「ははは。またこいつだ(笑)」

まぁ、いいや。何かが違うんだろうな。

一気に日が傾き、海が黄金色に変わる。

PB150706.JPG

「明日、本当に雨降んのかね?」
「いや、降らんでしょ。」

夕方になると潮が完全に変になり、手前は右へ、沖は当たってから左へという複雑な潮。
重めの立て気味の仕掛けでようやく本日初の型物を掛けるも・・・「ギラッ」と水面に現れた瞬間に針ハズレ。

「あ〜あ。今のチヌだったね」
「うん、上顎に掛かってたのかな。ま、いいさ。そろそろ帰り時間かな」

PB150708.JPG

こちらも影響された訳では無いが、何か心もゆったり。
時間は短かったけれども、何ともいえない充実感で戸賀を後にした。

・・・・・・・・

2日目の朝を迎える。外はバケツをひっくり返したような雨が降っていた。
「おはよ。やはり凄い雨だすなぁ」
「そうですね・・・」という彼の顔には「行かない、冷たいのイヤ」と書いてあった。
「ま、ゆっくり行くだけ行ってみますか?」
「うん、止まなかったら辞めよう(笑)」と、6時頃に家を出た。

今日はホームグラウンド加茂沖磯である。
秋田市内から遠ざかるにつれ雨雲が薄くなり・・・遂には雨が上がってしまった。
すげぇ・・・さすが晴れ男。

漁港へ着く。思ったより車は少なく、20台程度。
お?Dボーイ君の車だ。今日は早いじゃん(笑)隣に止めよっと。
ヒロ兄ィに挨拶を済ませ、船は南へ疾走・・・あぁ、気持ちいい。
2日続けて、遠方からの友と一緒に海を見れるこの幸せ。

前日にグレが好調だったとされる島へ降りた。
まだ雨は落ちてこないものの、どうも漁港に居たときより雲行きが怪しい・・・
「う〜ん、降らないよね。」
「昼までは持つと思うけど・・・あ、分がった!島の名前が悪い」
上がった島は「ババのハナレ」
お互い共通の友人で、房総に「嵐を呼ぶ男」とされる「ババさん」という方が居る。
「あはは。そりゃ名前が悪い(笑)」
※ババさんごめんね(笑)

もしかして真鯛?って可能性もあるので、優さんには先端の焼飯島向きを勧め、僕は北を向く。

でも潮は動いておらず、前日とはうって変わって各種エサトリがワンサカ。
それでも「エサトリ酷いですね!」ではなくて、フンフン♪と鼻歌でも聞こえてきそうな感じで釣りを続ける彼。

PB160711.JPG

今日も思いっきり自然体。なにか海に溶け込んでしまいそうな雰囲気だ。
「何とかして釣ってやる!」という感じを全く受けない。
まぁ、前からそうは思っていたけど、更に自然体になったんだな・・・何だかいいな。

そして今日も僕より先にグレを釣り始める。
「う〜ん、今日も深いですね。でも色は昨日よりマシかな?」
そして、チャリコ、ウマズラを釣りながらグレの数も伸ばしていく。
遂には念願の「男鹿磯チヌ」を釣り上げた。

PB160712.JPG

「おぉ〜やったぁ!」思わずこちらも満面の笑みがこぼれる。
僕も少しずつグレを釣ったり・・・チヌを釣ったりコッパを釣ったり。

PB160710.JPG


でも、もう少しだけ海が変わらないかな・・・エサトリの数が半端じゃない。

今日もグットタイミングでヒロ兄ぃが登場。
「なんとだぁ〜?」
ここでも良かったのだけれども、せっかくのヒロ兄の好意。
また、別の磯に彼を案内できるってのもいいかな。
という事で磯替えする事にし・・・下黒島へ渡った。

こちらはメバルとタナゴが初めからうるさかった。
それでもまた普通に釣る。

PB160717.JPG

大笑いだったのは、彼があわせた瞬間に僕のウキも「ズバッ!!」と入る。
「お?こりゃグレか?」

で、彼の針に掛かっていたのはグレ。
僕の方は・・・
PB160713.JPG

なんでやねん!!(笑)
しっかし、どうすればこうなるんだろ?これじゃスパッ!とウキも入るはずだ。

「きしさん、よう魚釣るねぇ〜(笑)」
「んだがら(笑)凄いでしょ?」
「あはははは」

刻々と時は過ぎ・・・あれだけ前から楽しみにしていた釣行は終わりの時間を迎えた。
と同時に、今まで我慢していた空からは大粒の雨。
ふぅ。今年も終ったなぁ・・・。

PB160718.JPG


ゆっくりと景色を眺めながら雨の加茂を後にした。

家へ戻り、彼は明日の仕度をする。
側でずっと荷支度を見ていた三男君がとても印象的だった。

PB160720.JPG


今度、優さんが来る頃には会話も出来るだろうな。これももの凄く楽しみだ。

女房の料理、釣った魚を刺身にして一家だんらん・・・ゆっくりと夜が更けていく。
あ、そうそう。
よ〜じ君が爺ちゃんと捕ってきた、男鹿のアナゴ。広島にも「旨い!」と大好評だった。
広島湾でもアナゴ漁が盛んなんだけどね。彼に見せたら「なんじゃ?この生き物は(笑)」
やはり形はかなり違うらしい。向こうは目があるからね(笑)
もう漁は終ったと思うけど、また来年捕ってきてな。
本当に美味しかった。あらためて、ありがとう。

翌朝、秋田空港へ彼を送り届ける。
今回もあっという間の2日間だった。

「きしさん、コーヒーおごるよ。あれ?万札しか無いや。70円入れるから残り出して(笑)」
「わはは。なんちゅーおごり方だ。こちそうさん(笑)」
「ほんじゃ、ありがとう。また会おうね」
がっちり握手して別れた。

「また会おう」
言葉で言うのは簡単だが、広島と秋田。距離にして1,300キロも離れている。
そう簡単に会える距離では無い。
でも、近いうちに必ず何処かで会えるのだろうね。そんな気がする。
次回は南紀かな。

今回も楽しかったのは当然だけど、また勉強になった。
人それぞれスタイルがあると思うが、僕がこれから進もうとした道も“自然体”だったんだ。
春から少しだけ「モヤッ」と心に引っ掛かっていた物が取れた気がした。

彼のHPのタイトルは「いつも海を見ていた」

なんとも彼らしい・・・と、改めて思った。

▲

コメント

投稿 : tomi|2008-11-18

きしさんも充分自然体だと思うけど・・あ、自然児か。

広島からの友も久しぶりの男鹿磯を満喫していただけたようで
良かったですね。

僕も先日べラを一生ぶん満喫してきました。
水曜日は「行かない、歩くのイヤ」の罰があたった。(笑)

う〜ん、広島まで1300キロもあるのね・・
遠いようでやっぱり遠い。

来週でも行ってみる?休みとるけど(爆)

投稿 : きし|2008-11-19

>tomiさん

あ、そうか。
tomiさんも広島へ行ってるんですもんね。
行ってみる?車で(笑)

月曜はお疲れさんでした。

なんだか、仲間内でベラ沢山釣ってるの、僕とtomiさんだけみたいだね。
何でだろ(笑)

次回の釣行が楽しみだなぁ(^^;
ベラを撲滅すっか。

投稿 : なかちゃん|2008-11-19

こんばんは、きし様!(^^)!

いいですね〜その様な癒し方私もしてみたい。だめだな何時もギシ×2していては、魚に悟られてしまうもの。今年は常にとがっていたのかもしれません。〈心にゆとり〉が無かったのかもしれません。まだ×2修行が足りませんでした。

さて、ついに『ゆき』が降りました。しかも大量に。どこにそんなに降ったかって?寒風(さむかぜ)山にですよ!!今朝なんかは、山登りに20分もかかりました。しかも下り坂の怖いこと。そろそろゴルフも終わりに近くなりました。と言う事は、『寒クロ』の季節かな(*^。^*)ここらで閉めておかないと一年が終わりません。

しかし、過ぎてしまえばあっという間の月日で、まだまだ余裕をこいていたらもうそこまで12月がきていました。釣り始めの1月4日には、加茂で頭からずぶぬれとなり波乱の幕開けでしたから最後まで何かがありそうな気配がします。残りの日々に期待を込めて頑張るかな〜  (^_^)/~

投稿 : 福島のhiro|2008-11-19

こんばんはですぅ

男鹿〜広島間1300kmですか!
それに比べると男鹿〜福島間450km!近い?・・・のかぁ。
でも、なかなか行けないですね。特にこれからの季節は荒れ模様が多いみたいですしね。
好天と週末と家庭環境(笑)、が合致したら行きたいですね〜。

この前、磯学vol2の記事拝見しました。すごいですねー(*_*)
でもラインのお金しかなくて立ち読みしちゃいました(^^ゞ
次行った時は買いますのでお許しを・・・

投稿 : きし|2008-11-20

>なかさん
遂に振りましたねぇ。男鹿の方が秋田市内より多いみたい。
まだ海水温度が高いから、沿岸の方が多いのでしょうね。
昨日、田沢湖へ行きましたが全然降ってませんでした(^^)

さて、いよいよ寒クロですね。
お互いに、気持ちよく新年を迎えられますように・・・ってまだ早いか(笑)

人それぞれ違うとは思いますが・・・自分の場合。
大事な事は、いつも「今日も楽しかった」でその日を終えること。
楽しんだ延長戦上に50cmの黒鯛がオマケで付いてくれば最高ですね(^^)
ま、仮に釣れなくても極寒の中で仲間と波を被りながら釣るのも楽し。
後から思い出して「あの時だばしゅんでがんたなぁ(笑)」と、一杯やりながら語り合う。
これも思い出として楽しいですよね。
釣りってそんなものだと思ってます。

今日も寒風山の坂はキツイだろうなぁ。
お気をつけて!

投稿 : きし|2008-11-20

>hiroさん

立ち読み、ありがとうございます(笑)
あんなん書いてますが、今年も結果が付いていません(爆)
ま、来年またどこかの島でグレ談義しましょう♪

んで、福島は近いっす。
・・・というか、僕の距離感が変なんだけどね(笑)
ちなみに1,300キロをダイハツの軽自動車で走破しました。
当然、仲間からは変態扱いです(爆)

まだまだ男鹿へ来られます?
今シーズンも、一月末までは楽しめると思いますが・・・
気をつけて入らして下さい(^^)
根太で待ってます(笑)

コメントを投稿


▲

トラックバック

URL: http://www.ff-f.jp/cms_blog/mt_tb.cgi/276

▲

海日記

プロフィール

きし

ご意見・ご感想はこちらまでお願いします

幼き頃の投げ釣りに始まり、途中空白期間を経て20代後半から本格的に海釣りを再開する。
黒鯛、メジナ、真鯛を求めて通年海へ通う。年間釣行日数60日

ホームグラウンド
男鹿半島加茂沖磯(フカセ)
船川港(紀州釣り)

・紀州釣りクラブFreedom East所属
・マルキューフィールドテスター
・東レフィールドスタッフ

最近の記事

  • 復幸
  • 来年への想い ~G杯グレ男鹿予選会~
  • 原点 ~第7回船川カップ~
  • 大会告知 ~船川カップ~
  • やばい1日
  • 日々
  • 冬だね
  • 来年へ・・・ ~独りG杯~
  • より単純に
  • 今年も・・・

バックナンバー

  • 2014年3月 (1)
  • 2013年10月 (1)
  • 2013年8月 (2)
  • 2013年4月 (1)
  • 2013年2月 (1)
  • 2012年12月 (1)
  • 2012年11月 (1)
  • 2012年10月 (2)
  • 2012年9月 (2)
  • 2012年8月 (2)
  • 引越し前の記事はこちら

カテゴリ

  • お知らせ (20)
  • 師匠のお話
  • 思い出話
  • 独り言 (7)
  • 釣りのない週末 (5)
  • 釣り道具 (1)
  • 釣行記 (133)

feed

  • RSS2.0
  • ATOM