2008
10/20

７分の勝負

釣行記 / comment : 22 / trackback : 0

「10時間も岩の上？よぐあぎねぇ〜な」
会社でたまに言われる事である。
「飽きてたまるか！あなたこそ毎週末の川○通いあぎねが？」
とは言わないが、価値観が違えばこんなもんなんだろう。え？昔の自分にそう言ってみろって？
そりゃ言えん・・・というか、30歳まで飽きなかったからね。

確かに今回の釣行は、価値観が違う人に聞かせる事はできないかも。
何てったって10時間のうちの7分・・・600分のうちの7分だ。

それにしても、大昔からある「魚釣り」という単純な行動。
人それぞれ価値観は違えど、何故こんなにも夢中になれ、素晴らしく、時にはドラマチックなんだろう。
不思議なもんだね。

さて、今回のドラマですが・・・

道中、海風に寄り外に出して置いてもらったオキアミをトランクへ積み込み・・・ん？何かオキアミに張り紙が？？
暗くてよく見えなかったけど「きし様」って書いてあったのが見えたので気にしないで積み込む。

久しぶりの「我がホームグラウンド加茂漁港」へ着いたのは３時半。
まだ仲間も到着しておらず、久しぶりに満天の星空を１人で満喫する。
余計な光が全く無いこの場所は、家で見る星空とは随分と違うもんだ。

今日は「高兄」こと高山さんと、トラちゃんと一緒に釣りするのだ。
今更説明の必要もないけど、東北屈指のグレ釣りトーナメンター高兄！
（石鯛のフカセ釣りでも有名・笑）
そして「鬼アワセ」や、必ず何かをやらかす「仕事人」の異名を持つトラちゃん。
海ではしょっちゅうお会いするけど、同じ磯に上がるのは初めての事。
二人とも釣暦や実績なんかは僕より当然上で、技を見れるのも楽しみなんだけど、何より楽しいのが二人のトーク。
もう船に乗る前からワイワイガヤガヤと笑いが尽きない。まぁ、ほんとに愉快な連中だ。

ワイワイやりながら船に乗り込み出船を待つ・・・今日は「シャキッ！」と、ヒロ兄ィが登場。

「おはようございまーす。サバ、消えだすか？」
「おぅ・・・サバ？昨日まだ戻って来たや（笑）」
「うへぇぇぇ・・・居ねどこさ連れでって（笑）」

始めは焼飯島や女泣き周辺を考えていたんだけど、北の方が良さそう・・・って事で、中ノ島ハナレへ渡礁した。

やる気と反して、忘れ物の多い僕と高兄はライトを忘れてた。
僕らは明るくなるまでワイワイと談笑。
トラちゃんは早速エギの準備を始め、シャクリ始めた。
彼はフカセの腕前はもちろんの事、シーバスやアオリイカなども凄腕で釣りの幅が広い。
かなり反応が悪かったようだけど、何とか１パイげっと。お土産として僕が貰った。

んで、イカの反応が悪い？・・・この時少々心配したのだが、明るくなるとその答えが判明。
ここ数日、凪が続いている割には水色が妙に悪い。
でも前日に仲間が戸賀で爆釣しているし、28キロ島では友ちゃん＆大ちゃんが真鯛まみれでヘロヘロになったというし・・・この水色でも食うのかな？

まぁ、考えても仕方が無い。とりあえず沖向き先端に入って準備を始めた。
高兄は北側の先端、トラちゃんは南の水道へ。
さて、コマセを作るか・・・ん？何だと？サバ？（大笑）

朝見たときは暗くて気が付かなかったが・・・本当に居たらシャレにならんぞ。
サバ用のオキアミって・・・（笑）

んでもなぁ・・・本当に奴らが居そうな水色だ。

恐る恐るコマセを入れる・・・よし、今の所は居ないよ。友ちゃん（笑）

際には結構な数のフグとバカズラ。んでも少し沖へ入れると餌は延々と残ってくる。
鯛が入っているのか？とも思ったが、延々と残ってくる。
ちょっと広い範囲で三人とも同じ様な状況だから鯛ではないのか・・・と思ったその時。

少しだけ潮が走った短い時合いを逃さず、高兄が何かを「ギュォーーーン！！」と掛ける！

竿が尾長狙い（笑）だったので、そんなには曲がらなかったが・・・ぶち抜いたのは40弱の真鯛。

まぁ、やり取りも含め、あの一瞬で食わせるとは。
やはりただの楽しいお笑い芸・・・じゃなくて只者ではない（失礼・笑）

その後、沖から少し茶がかった笹濁りの潮が当たってくると、エサトリすら無反応。

・・・あっちゃぁ。こりゃいかん。

「高兄、この色まずいっすよね？」
「んだなぁ・・・メジナの色でねぇなぁ。しんたげ厳しいや、多分」
って雑談していると早々と大竹丸が登場。
「おぅ、門前さいぐが？」
「うんうん、いぐいぐ」
３人揃って首を縦に振った。

色付き始めた加茂の山々を眺めながら南へ・・・

もうすっかり秋だなぁ・・・。

うっとりしていると門前到着。
ちょっと狭かったが、先客の方が尾舘を希望したため、僕らは小舘へ降りた。

水色は少々改善気味だが、やはり良くはない。
ま、駄目なら真鯛でも狙おう・・・と、コマセを入れて潮流を確認しようとしたら、うへっ！！
夥しい数のフグの群れ。いわゆる「ジェットフグ」

仕掛けを入れ、ライン操作をしようとしたら妙にラインが軽い。
「はて？あ、そうか、1.5号の道糸だもんな。初めて使ったけど軽くて操作性抜群じゃん♪」
なんて納得していたら・・・何の事はない。
ウキ止めを齧られて道糸が切れ、ウキだけ流れていたのだった。
仕掛けが付いていないから軽いのは当たり前・・・ははは・・・はぁ・・・。

「お？きしさん、居る居る」

高兄が前方を指差す。どうやら本命が薄っすらと見えたようだ。
彼の動きが急速にスピードアップする・・・彼はサイヤ人になった。

お、いかん。こっちも急いで仕掛け作らねば。
全ての動きがスピードアップしたサイヤ高兄は、三投目で奴らの動きを見切ったらしく、ポンポンと釣り始める。
こっちもようやく仕掛けを入れるが、どうにもアタリが上手く出ないというか、拾えない。
僕に魚はよく見えてはいなかったが、恐らく棚は2ヒロ半？な筈なんだが・・・
「ジワッ」と反応があっても、直ぐに吐き出して？いるのか、針に乗らない。

「高兄？ひっとしてメッチャ渋い？」
「んだぁ、バカずらこいでればエサ離すなぁ」
っそう言いながらも20ｃｍ後半のサイズをバンバン釣る。
「ぬぅっ、きっと俺ってバガずらこいてんだな・・・笑」

正直、ちょっと焦った。
「えっと・・・渋いんだろ、それじゃ」と再び仕掛けを変え、ようやく微妙なアタリで１尾。
それもウキに波紋が出来た時にアワセたものである。

その間、10分も経っていない。
一気に鯵の大群が入ってきて、メジナの反応が消えてしまった。
おそらく７分程度の時間帯だったと思う・・・あぁ、時合い終了だ。

「プシュゥ・・・シュワシュワ」と音をたてて、サイヤ高兄は普通のお笑い芸・・・いや、人間に戻った。

その後はエサ残り・・・時々、鯵・・・延々と。

マタ〜リした時間だけが過ぎていく。

それでも沖向きで黙々と竿を出していた「仕事人トラちゃん」は、1本チョイの棚からチヌやら真鯛やらグレやらを数尾引っ張り出していた。

流石やなぁ。この人も僕には無い何かを持っている。

最後まで悪あがきしたけれども、自然には勝てず。
何をやっても反応が無いんだから仕方が無い。

600分のうち、反応があったのが7分間。
そうして今日の釣りは終了した。

「なんとだったぁ」と、ヒロ兄ィ。
「んなぁぁ〜まるでダメ男（笑）」
「んだべ（笑）今日だばイガも全ぐダメだったもの・・・水悪りもんな、水」

全域でメジナの反応が悪かったらしく、釣れた人も2本とか2本半とかの水深。
仕方がなかったんだ・・・。

しかし、あの7分間。
競争した訳ではないけれども、結果は7対1の差である。
これが、カカロットの、いや高兄の実力であり、僕の今の正確な現実なんだろう。
流石に当日はちょっと悔しかったけど、今思えば厳しい状況でアレが見れて良かったと思っている。
僕はトーナメンターを目指している訳では無いけれども、あの状況判断の速さと手返しの早さ。
なんか最近は「モヤッ」としていたけれども、いい目標が出来たわい。ありゃすげぇ。

思えば「浮けば釣れるだろ？」って、いつも安易な発想で釣りしてた。
それを見直させてくれるのがトラちゃんの釣り。
「今日は浮かない」とみるや、きっちり棚を探って深棚で食わせる。

「まるでダメ男」な土曜日だったけど、なんとも収穫の多かった１日。

「10時間も岩の上？よぐ、あぎねぇ〜な」

ね？こんな凄い仲間が沢山いるのに、あぎてたまるか。
独身だったら次の日も高兄誘って行ってたさ。

さて、こんな翌週は一週間がやたらと長いけど、今週末も楽しみだ。

前にも書いたけど、人との出会いは己をも育て、己を見つめる良い機会になる。
無論、技術を高めるとかそういった意味もあるけど、何より良き出会いは己の心が和む。
自分の笑顔は家族の笑顔。
もう人生も後半だけど・・・元気なうちにもっと沢山の人と出会えればいいなぁ。